俺様常務とシンデレラ
私は、そんなに大事なものを、勝手に手放してしまったの……?
そのアンクレットは、本当は常務がくれたものだった。
常務と私は、駅前で会ったあの夜よりもずっと前、20年前の同じ日に出会っていた。
常務のお母さんが、小さな常務を想ってプレゼントしたもの。
私と常務の繋がりを証明するもの。
私と常務をもう一度引き合わせてくれたもの。
ふたりが結ばれるように、魔法がかけられたリボンのアンクレット。
それを私は、何も知らないで、勝手に……!
「あっ、こら! 絵未!」
あまりの混乱に押しつぶされそうになった私は、とっさに常務の前から逃げ出すことを選んだ。
ドレスを裾を持ち上げて、広いホールを全速力でかけて行く。
「このやろう! 逃げんな!」
常務が後ろから慌てて追いかけてくる。
あんまり素を丸出しにした口調で叫ぶから、すれ違うパーティーの出席者たちがみんな一様に目を丸くしている。
私はそんな驚き顔の人たちの間を縫って、ホールの出口を目指してひた走った。