俺様常務とシンデレラ
大階段を下りたところで、後ろからウエストに力強い腕がまわされ、とうとう常務に捕まってしまった。
「まったく、両方脱ぎ捨てて逃げるシンデレラがどこにいるんだよ」
「きゃあ!」
呆れ返ったように言う常務は私の膝とお尻の下に手をまわして、ひょいっと抱き上げてしまった。
片方の手には、ちゃっかり私が脱ぎ捨てたハイヒールを持っている。
「じょ、じょーむ……」
捕まってしまったことで私はなんだか泣きそうになり、情けない声を上げて常務の首にしがみつく。
何も知らないで、勝手にアンクレットを手放しちゃってごめんなさい。
今の私をちゃんと見てくれて、好きになってくれてありがとう。
私はずっと、私の方が本当の常務を見つめていて、この人を好きなんだと思っていた。
だけど常務は常務で、今目の前にいる私だけを見つめて、好きになってくれていたんだね。
私がぐずぐずと鼻を啜る間にも常務はスタスタと進み、ロビーの端にあるソファに私を下ろして座らせる。
「別に怒っちゃいねえよ。言っただろ。これがなくたって、お前はお前だって」
そう言いながら私の前にしゃがみ込んだ常務は、私にハイヒールを履かせ、ポケットからアンクレットを取り出した。