俺様常務とシンデレラ
「ただ、母さん曰くこのアンクレットには、『贈った相手と永遠に結ばれる』って魔法の他に、もうひとつの魔法がかかってて……」
常務は少し拗ねたような顔で言いながら、私の左足首にピンクゴールドのアンクレットを付け直した。
久しぶりに、くるぶしの上をリボンのモチーフが滑り落ちる。
「もうひとつの、魔法……?」
私がすっかり涙の膜が張る瞳で見つめると、常務は意を決したように小さく息をついて、私の左手を取った。
目を閉じ、跪き、指先に唇を寄せる。
「俺の心の結び目を解けるのは、あなただけです」
まるで誓いの言葉を告げるように、大事に呟きながら、私の指先に小さなキスをした。
それからふと顔を上げて私を見上げ、はにかんだように微笑む。
漆黒の瞳が、キラキラと輝く。
「魔法にかけられたのは、俺の方だ」
私の鼓動はその一瞬で釘付けにされ、再び動き出したときには、ドキドキと今まで聞いたことがないような不思議な音を立てる。
私は本当に、出会ったんだと思う。
私の、私だけの……。