俺様常務とシンデレラ

私は、常務のことが大好きだ。


意地悪で、子どもっぽい。

だけど実は照れ屋で、見かけに寄らず不器用な性格をしてる。

恋人同士でも滅多に甘いセリフは言ってくれないし、優しくするのが下手だし。

やっと"絵未"と呼んでくれるようになったけど、まだ"お前"と言われることのほうが多いし。

そのくせ私が他の男の人を名前で呼ぶことを気にしたり、こっそりヤキモチ妬きなところもあるし。


私が憧れていたおとぎ話の王子様とは、ちょっと違うような気がするけど。



それでも私は、思うの。



この人が、この人だけが、私の運命の人。

私だけの、たったひとりの王子様だって。



ゆっくりと唇を離した常務が、こつんとおでこを合わせて呟く。


「好きだよ、絵未」


私は嬉しくなってにっこりと微笑んで、もう一度自分からキスをした。








午前0時の鐘は、聞こえてこない。

このリボンがかけたシンデレラの魔法は、きっと永遠に解けない。
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