俺様常務とシンデレラ
いつもは世話の焼けるお母さんだけど、珍しく母親っぽい顔をしている。
「だけど、大和が運命の人と出会えたとき、その人が必ず大和の心の結び目を解いてくれるから」
そして俺の手にアンクレットをしっかりと握らせて、両手でその手を包み込んだ。
「あなたの心の結び目を解けるのは、あなたの運命の相手だけよ」
ふにゃりと笑うお母さんは、魔法の呪文を伝えるように囁いた。
「ふーん、運命ねえ……」
「あ、今バカにしたでしょ?」
「だってバカみてえだもん」
リサイタルがはじまる前のガヤガヤした教会で、俺は受け取ったアンクレットを細長い箱にしまった。
あとで夏目に渡しておこう。
夏目は最近とーちゃんの秘書になったばかりの若造で、まずは俺のお守りとやらをするらしい。
ふん、お守りされてやってんのはこっちだってーの。
「いいわ、今に見てなさい。大和だって、いつかこの人しかいない!って思える相手を見つけるんだから。もちろん、お母さんにとって運命の相手はお父さんよ。お父さんってああ見えて本当はすごく優しくて……」