俺様常務とシンデレラ

堪えきれない笑い声を含みながら大和さんの声に応える。


だけどそれきり返事が返ってこなくて、私はようやくなんだか様子がおかしいことに気付いた。

くるりと後ろを振り返り、ソファに座る大和さんを見上げる。


「……え」


見上げた先の大和さんは、なんとも言えない、困惑したような表情を浮かべていた。


なっ、なんですかその、迷子の子どもみたいなお顔!


眉を下げて、何かを言いたそうな大和さんは、だけど何と言っていいのかわからないというように、小さく何度か息を吸ってから絞り出すように言った。


「……行くな」


行くな……って、なにが?

はっ!

ま、まさか……!


「ちっ、違いますよ! そんなの、大和さんとに決まってるじゃないですか!」


そりゃ私の言葉もちょっと足りなかったかもしれないけど、なんでそこを勘違いしちゃうの!?

私が"甘〜い夜"を一緒に過ごしたいのは、大和さんしかいないのに!

ていうか、理久さんとじゃひたすらストイックに小鞠ちゃんの自慢話を聞かされるのがオチだよ!
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