俺様常務とシンデレラ

当然、夏目さんも、常務の本性を知る貴重な人物のうちのひとりだ。


確かに、夏目さんが私を選んだ理由ってなんだったんだろう。

すっかり浮かれて深く考えたことはなかったけど、常務のことをよく知ってる夏目さんが、私を常務の秘書に適任だって思ってくれたってことだよね?

常務は何か心当たりがあったのかな。


き、気になるかも……。



「それより、今日の予定は?」

「あっ、はい! えっと、今日はですね……」


突然話を打ち切ってお仕事モードになった常務につられて、私も急いでスケジュール帳を開く。

ここに書かれているのは私の予定ではなくて、全て常務のお仕事の予定。


ボスの時間管理は秘書の大事な仕事のひとつだけど、私はまだ時間の使い方や予定の入れ方のコツが上手く掴めなくて、こっそり夏目さんに相談している。




今日は午前中に会議がひとつ、午後からは子会社や関連会社の役員との会談がいくつか詰まっていた。

夕方からは、来月新しくオープンするホテル『アジュール』への視察がある。



「ホテルの視察のあと、お前は直帰して構わない。その代わり、後日ちょっとした時間外勤務を頼みたい」

「え?」

「まあ、悪いことじゃないから心配するな」


うむ、常務。

そう言ってるお顔が、なんだか悪いことを企んでいるように見えるのですが……?
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