俺様常務とシンデレラ

「うん、私もそう思ってた。なにかいいことでもあったの? たとえば……その、アンクレットの恋人とか」

「ええっ!?」


私の方に身体を寄せて、少しからかうように言った香乃子さん。

慌てて葉月さんの方を見ると、彼はふいっと視線を逸らしたけど、耳はしっかりこちらを向いている。


私はふたりの誤解を解くために、一生懸命に首を振った。


「違いますよ! これは、全然そういうのじゃないんです。こ、恋人とか私、もうずっといないですし」

「え? そうなの?」


薄い茶色のぱっちりした瞳を更に丸くして、香乃子さんがパチパチと瞬きをする。


「なーんだ、そうなのね」


なんだかがっかりしたようにそう言って、私に寄せていた身体を離した。

すると今度は葉月さんの方が遠慮なく興味を示して、デスクの上に身を乗り出すと、不思議そうな顔で聞いてくる。


「じゃあそれ、誰からの贈り物なの? 毎日つけてるから、てっきり大切な人にもらったんだと思ってたよ」

「え? どうして贈り物だって思うんですか?」


だって、アクセサリーなんて自分で買うこともできるのに。

贈り物だとは限らないと思うんだけど……。


「絵未ちゃん、知らないの? アンクレットを左足首につけるって、ちょっと意味深なんだよ」

「え?」
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