俺様常務とシンデレラ

い、意味深……?

首を傾げた私に、香乃子さんがこくりと頷いて、心なしか楽しそうに教えてくれた。


「左足首のアンクレットは、"恋人がいます"っていう印なの。男の人が、独占したい女性に贈るものよ」


香乃子さんは右手の繊細な指先で輪っかを作って、自分の左手首をキュッと押さえると、ふふふと笑って言った。


ど、どど、独占したい女性!?

ひゃあー! なにそれ!


「うわ、ぜ、全然違います! あの、これ、小さい頃から持ってたもので、たぶん母のものなんだと……」

「ふふふ、別にいいと思うけどね。左足首のアンクレットの意味なんて、いちいち気にする人のほうが少ないよ」



うわあ、どうしよう……!

私の頭の中に真っ先に浮かんだのは、なぜか常務のことだった。


常務がもしこのアンクレットの意味を勘違いしてたら、って。


でもそんなことを考えてしまう自分がよくわからなくて、自分の意思とは関係なく熱くなる頬を両手で押さえた。



お、落ち着け、絵未!

別に常務がどう思っていようと関係ないでしょ。

だいたい、常務は私がいつも同じアンクレットをつけていることにすら気付いていないかもしれないし。


うん、そうだ、きっとそうだ。

なんたって常務は、本当は全然王子様なんかじゃないし。

意地悪だし、子どもっぽいし、腹黒いし、ドSだし。
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