俺様常務とシンデレラ
「理由が知りたいなら教えてやる。FAXは裏表を逆に送るし、ホテルの予約もまともにできないし、電話を保留にしたと思ったら切ってるし!」
「うっ、そ、それは……」
事実だから言い返せない。
だけど常務は私がおっちょこちょいをやらかすたびに、笑って許してくれた。
常務が怒るとこんなに怖い人だったなんて、知らなかった! 詐欺だ!
「だからお前は、どう考えても秘書には向いてないだろ! なんでアイツはこんなへっぽこを連れてきたんだ!?」
ひー!怖いー!
この人誰なのーっ!?
こんなの、私の知ってる常務じゃない!
常務はこれまでの彼からは考えられないほど乱暴な言葉遣いで叫んで、つい力が入ったかのように私の腕をぎゅーっと握った。
「へ、へっぽこ……」
涙目で見上げると、グッと寄せられた眉の下で鋭く細められた黒い瞳と目が合って、私の頭はようやくこの状況を理解し始めた。
常務は裏表の激しい人なんだ。
外面王子だったんだ。
だけど今、もっと大事なのは私のクビだ!
やっと就職できたのに、ほんの1週間でクビになるわけにはいかない。