俺様常務とシンデレラ
私がぶつぶつと自分に言い聞かせていると、香乃子さんと葉月さんはこれで話は終わりとばかりに、それぞれ仕事に取り掛かり始める。
私もふうっと大きく息をついて、デスクの上に積み重なった資料の中から、会議のための資料をガサゴソと引っ張り出した。
* * *
私が左足首につけているアンクレットは、物心ついたときからなぜか大切にしまってあるものだった。
もらったときの記憶があやふやだけで、たぶんお母さんのものだったんだと思う。
ピンクゴールドの華奢なチェーンのアンクレットで、中央にはキラキラ光る白くて小さな石が3個ついている。
そして真ん中の石には、ゆらゆらと揺れるリボンのモチーフが繋がっていた。
ほとんど忘れかけていたようなもので、長い間、部屋の引き出しの中にしまってあった。
だけどある日突然、夢にこのアンクレットが登場して、ふと思い出したのだった。
もう20日くらい前の夢になるかな。
夢の中で、私は小さくて可愛い教会の前に立ち、辺りには柔らかな月明かりが降り注いでいる。
黒い丸襟のブラウスに、ふわふわと揺れる白いチュールスカートを履いていた。
目の前には黒いベストの男の子が立っていて、彼が私の手を取ると、どこからかワルツが聞こえてくる。