俺様常務とシンデレラ
私はちょっと唇を尖らせたけど、常務はそんなのお構いなしだ。
ホールの左右には大きな柱が続き、2階と3階にあたる部分にはバルコニー席が設けてある。
奥には小さなステージのようなものもあった。
「とても立派な会場ですね。ここで行われるオープニングセレモニーが楽しみです」
常務がそう言うと、野本さんは目尻を下げて満足そうに微笑んだ。
「ありがとうございます。東堂(とうどう)社長も先日ここへいらして、同じように仰っていました」
東堂社長というのは、確か、アジュールでのウエディングプランを任せているブライダル会社である、(株)プレジの社長さんだった気がする。
たぶん、東堂理久(りく)さんという名前だったような……。
東堂社長は常務より少し年上の、まだまだ若い社長さんだ。
えーっと、その東堂社長のお父様もまたど偉い方だったと思うんだけど、あんまりよく覚えていない。
それから野本さんは私と常務に様々な場所を案内し、私たちはお城のようなホテル内をまわりながら最上階へと辿り着いた。
最上階は他の階とは違い、エレベーターを下りると目の前は一本道で、アーチ状の小さなトンネルのようになっていた。