俺様常務とシンデレラ
「その、結婚する相手って、たったひとりの王子様なんです。かっこよくなくても、お金がなくても、この人となら幸せになれると思うから、結婚するんだと思うんです」
話しながら、頬がだんだん熱くなっていくのがわかる。
うー! なんか恥ずかしいっ!
私なんてまだ23歳だし、結婚どころか恋人もいないし、こんなことを常務に語るのは変だと思う。
だけど、そんなの妄想だと言われようと、現実はそれほど甘くないと言われようと、私はずーっと夢に見てた。
いつか赤い糸で結ばれた、私だけの王子様と出会って、彼だけのお姫様になること。
「だから、えーっと、所謂"白馬の王子様"が迎えに来てくれることを夢見てるわけじゃなくて、自分だけの王子様だと思える相手と恋に落ちることを、夢に見てるんです」
私は常務のえんじ色のネクタイを見つめたままなんとかそう言いきって、それでも収まらない恥ずかしさにぎゅーっと目をつぶった。
はうー!
なんだこの羞恥プレイ!
なんで私、こんなこと常務にお話してるの!?
本当はその場でバタバタと身悶えしたいくらいだったけど、チャペルの沈黙に溶け込んでしまったかのように静かな常務の反応が怖くて、私は目を閉じたままジッと裁きを待っていた。