俺様常務とシンデレラ
「なんか、ガキみたいなやつだな」
「……は?」
小バカにしたような声につられてパチリと目を開けると、常務はサッと身体を離し、その腕を組んで仁王立ちの姿勢になった。
片方の眉を上げ、キレイな瞳にも形のいい唇にも、意地悪そうな雰囲気を宿してニヤリと笑う。
「ここに来たときからきゃーきゃー騒いで、大階段を上れるってだけでアホみたいに興奮するし。へっぽこ秘書は健在だな」
「なっ!? べ、別にへっぽこは関係ないじゃないですか!」
「そうか? バカがだだ漏れだったぞ」
常務はそう言ってフンッと鼻で笑い、ひとりでスタスタとバージンロードを戻って行く。
むきーっ! なんじゃそりゃ!
はいはい、わかりましたよ。
こんな意地悪で子どもっぽい常務なんかに一瞬でもぽーっとなった私がバカでした!
だいたい、ガキみたいなのはどっちだーーー!
私がぷりぷりと頬を膨らませながら常務の後を付いていくと、チャペルの出口で常務がふいに振り返った。
頬を膨らませたまま見上げると、常務は思いがけず、目尻を下げた優しい表情で笑った。
私は驚いて、ほっぺたに溜めた空気をぷしゅーっと抜く。