俺様常務とシンデレラ
「だけど、もしも俺に、本当の自分をまっすぐに愛してくれるお前みたいな女がいるなら、そいつがいつまでも夢を見ていられるように大事に守ってやりたいと思う」
常務はどこか嬉しそうにそう告げると、またくるりと振り返って小さなトンネルの中へと入って行った。
私はボケーっとその後ろ姿を見つめて、しばらく動けなかった。
へなへなと力が抜けそうになる。
まったく、子どもっぽいのはどっちなんだと、今度こそ本気で思う。
あんな無邪気な笑顔で、突然何を言い出すのかと思った。
私はさっきよりずっと激しく暴れ回る心臓をなんとか落ち着けて、ふらふらする足で常務の後を追って歩き始めた。
そして私は気が付いた。
王子様のような優しい顔でも、私をからかう意地悪な顔でもない。
あれが、はじめて見た、本当に本当に飾らない常務そのものなんだ。
そして厄介なことに、私はその常務こそ、どの常務よりもいちばんキラキラして見えてしまって、できることならもう一度見せて欲しいと思ってしまうのだった。