俺様常務とシンデレラ
「まあ確かに、あのときはお前のへっぽこぶりに助けられたな」
「あ、ははは、どうも……」
それって認めてくれてるの?
全然嬉しくないんですけど。
「それに、お前は字がキレイだ。整っていて、癖がなく、読み易い」
「え、あ、ありがとうございます」
さっきは『へっぽこ』だなんて言ってたくせに今度はサラリと褒めるから、なんだか混乱してしまう。
なんなの?
常務って二重人格な上にツンデレなの?
常務は役員用の濃い茶色のデスクをぐるりと回って、引き出しを開けると、ホッチキスで留められた数枚の紙を差し出した。
「それじゃあ、コレを頼む」
「え?」
私がそれを受け取ると、常務はなんだか人の悪い顔でニヤリと微笑む。
あーあ、もうどうがんばってもこの人を王子様とは思えなさそう。
ついさっきまでキラキラの王子様に見えてたのに、今では悪役にしか見えない。
第一王子の暗殺を企む、第二王子。
あれ、それでも王子様じゃん。