俺様常務とシンデレラ

「なんだよ、忙しい奴だな。驚いたり、落ち込んだり、ぽーっとしたり……。今度は泣くのか?」

「な、泣いでないでず……」


呆れたような声でそう言われて、私はズルズルと鼻をすすって唇を噛み締めた。


「王子様は、お姫様のピンチに現れるものなんです。でも私、お姫様じゃないし、ピンチになるほど何もがんばってなしい……」

「今度は何の話だよ。だからその、王子様とかお姫様とか、夢物語みたいな考え方を捨てろって言ってんだよ」


切れ長の瞳の男の人は、心底理解できないというように力なく首を振る。

そうでしょう、そうでしょう。

こんなストイックそうな雰囲気出しておいて、おとぎ話とか信じる人だったら私だってびっくりですよ。


いよいよ感情が昂ぶって、涙が溢れそうになる。

うぅー、初対面の男の人の前なのに!

しかもこんな美男!


すると隣から、より一層深いため息が聞こえてきた。



「はあ……。いいか、俺は無防備で泣き虫な女は苦手だ。妹もそのタイプだが、こっちがハラハラするしイライラしてくる」

「あ、あなだの、妹ざんの話なんで知りまぜん……」

「おい」


突然、力強い手のひらに両肩を掴まれて、綺麗な顔と向き合わされる。

女の人のように繊細な指先なのに、力の強さはやっぱり男性のものだ。
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