俺様常務とシンデレラ
今日、何度グラスに梅酒を注いだか数えようと思ったが、頭がガンガンして何も思い出せなくなったのでやめた。
熱をもった頬を、生暖かい夜風がなでる。
大学時代から借りているアパートは大通りを進み、駅の反対側にある。
それだって、ちゃんと就職できていれば、もう少しリッチな部屋に引っ越すはずだった。
でも今の私にはそんな余裕もお金もないので、大学生に囲まれながら八畳一間の部屋に居座っている。
いいもん。
ちょっと壁が薄いことに目をつぶれば、あそこだってなかなかいい部屋だ。
駅前の通りは人通りも多く、じめじめとしたうだるような暑さに拍車を掛けるようだった。
会社帰りか、飲み会帰りか、駅へ殺到するサラリーマンの目には、さぞ悲壮感漂う女に見えるだろう。
そんなことないゾ。
これはこれで結構、楽しいゾ。
だって、もしこれで有名百貨店の受付嬢とかになったら、とんでもないシンデレラ・ストーリーだ。