俺様常務とシンデレラ
「それならこれをオススメしよう! 綺麗な琥珀色だろう? ほんのり甘口で少し辛味があるが、すぐに酔える!」
渡されたカクテルグラスを揺すると、強いウィスキーの香りがした。
琥珀色がキラキラと揺れて、私を誘惑している。
むん……。
強いお酒……。
これを飲んだら、今夜起こった様々なことも、とりあえずは忘れられるだろうか。
私の肩を抱き寄せる男性は、軽快な口調でさらにカクテルに口を付けるように勧めてくる。
「これはチェリーリキュールとウィスキーで作られた、シンプルなカクテルだよ。名前は"ハンター"という」
「は、はんたー」
「そう! ちなみに"狩人"の意味だけど、このハンターは"都会の夜のハンター"って意味だ」
ニヒヒ、と楽しそうに笑う男性。
その顔を見ていたら、なんだか、落ち込んでいる自分がバカらしくなってきた。
そうだ、これはパーティーだ。
私はどうせシンデレラにはなれなかった、ただの庶民の小娘。
どんなピンチが訪れようと、王子様は現れない。
それなら庶民は庶民らしく、一夜の夢を豪遊してやればいいじゃないか!