俺様常務とシンデレラ
急に身体中に変なエネルギーが湧き上がって、私は手の中のカクテルグラスを一気に傾け、琥珀色のハンターを全て口の中に流し込んだ。
男性がぴゅうっと軽く口笛を吹く。
「お嬢さん、いい飲みっぷりだね。これ、ちょっとウィスキー多めに配合してあるから、度数35度じゃ済まないと思うけど……」
その言葉通り、喉の奥が焼けるようにカッと熱くなり、脈が速くなっていく。
ふらふらと目が回って、足元が覚束なくなる。
「ありゃ、お嬢さん、もしかしてあんまりお酒強くない……?」
ほらね、やっぱり悪い人じゃないの。
ちょっと申し訳なさそうに私の顔色を伺う男性は、フラつく私の肩をしっかり支えてくれる。
剥き出しの肩を支える手のひら。
もう少し冷たかったら気持ちいいのに。
たとえば、私の頬に触れた、常務の手のひらみたいに……。
私の肩を抱く男性はしっかり支えてくれていたはずなのに、身体はふらふらと前のめりに倒れていき、手の中にあったカクテルグラスも消えた。
なぜか左腕の一部がひんやりと冷たくて気持ちいい。
前の方から引っ張られるような力に逆らわずに倒れていくと、誰かの胸に受け止められ、背中に力強い腕が回された。
「佐倉さん! どこに行ってたんだよ、随分と探し……」
ああ、常務の声だ……。