俺様常務とシンデレラ
「……そうですか。彼女を保護してくれてありがとう。僕の大事な人です」
「そうでしたか。ちょっと放心状態でふらふらしてましたけど、大丈夫だと思います。その髪も、たまたま乱れてしまったのでは……?」
常務は私の頭の後ろに大きな手のひらを当てて、自分の胸に私の顔を軽く押し付けさせていた。
トクトクと、優しい鼓動のリズムが聞こえてくる。
目を閉じてその音にそっと耳を傾けていると、ハンターを一気飲みしたせいでガツンと襲ってきた目眩は、だいぶ治まってきた。
替わりに耳や頬が熱を持ち、頭が少しだけぼーっとする。
「彼女、疲れているようなので、今夜はここで失礼します」
常務はカボチャパンツの男性にそう告げて頭を下げると、私の肩を守るように抱きながら、会場の出口に向かって歩き出した。
さっき想像した通りの温度で、常務の手のひらが私の肩を包み込む。
常務は舞踏ホールの中に素早く視線を走らせ、誰かを見つけ出そうとしているようでもある。
その反面、誰かから私の姿を隠そうとしているようにも見える。
私はそんな常務をチラリと見上げてからそっと後ろを振り返り、美味しいカクテルをくれたカボチャパンツの男の人にひらひらと手を振った。
あの人、絶対良い人だよ。
きっとひとりでふらふらしてた私を心配してくれて、カクテルで元気付けようとしてくれて、そのおかげで常務とも会えたんだから。
カボチャパンツの男の人はニッコリと微笑んで、手を振りかえしてくれた。