胡蝶蘭
あのとき、この低く心地よい声の男に
向けられた銃口におもわず体が動いた。
あたしが動き盾になったのと
敵がびっくりしながらも引き金を引いて
しまったのはほぼ同時だった。
それでも一般市民のあたしを避けようと
してくれたのだろうか、
玉は曲線を描き、あたしの左腕にやってきた。
あたしはたまが自分に当たる直前
何故か手に持ったままだった胡蝶蘭の
鉢植えを思い切りは相手に向けて投げた。
パーンというあたしに玉が当たる音と、
ガシャンという鉢植えが割れる音は
またもやほぼ同時だったと思う。
そしてあたりは血の海と化し、
あたしはその光景に耐えられず
「おい!?」
なんて言う焦る声を聞きながら
まぶたを閉じたのだ。