風を切る君
「おい!間宮!足るんでんぞ!!」
「すみません…。」
あの後、私と一哉は話を終えて
それぞれ、無言でバイバイした。
私は部活に、一哉は家に。
だけど、一哉のことが
頭にいっぱいで
部活も身に入らない。
今の私のフォームは最悪だ。
「もういい!間宮、今日は帰れ」
初めて顧問に声をあらげられて
びくっとした。
「…はい。」
「…俺も帰ります。」
そういって、
隼くんにぐいっと、
腕を引っ張られた。
すたすた歩いてまったく
私を見てくれない。
なんか、怒ってるっぽい…。
「隼くん!?」
手に力が入っていて
すごくいたい。
「隼くんってば!」
私は、無視されたまま
しばらく歩いたあと、
路地裏に入った。
そして…
ドン!いきおいよく
私は隼くんに壁に押し付けられた。
「なあ、あいつとなにがあったんだよ?」
手を引かれてから初めて見た
隼くんの顔は、怒ってるような
せつなそうな、複雑な表情だった。
「なにもないよ…。」
「嘘つくなよ」
じっと、私の目を見て
心配そうな目で訴えかけてくる。
そんな、彼を見て自然に涙がでてくる。
「…今日転校してきた一哉はね…」
「うん」
「私の幼馴染みでいつも一緒にいたのに、私の前から消えたの。」
「消えた?」
「うん…。」