風を切る君


「じゃあ、赤城はー、間宮の後ろな」

よりによって私の後ろ。
私を見ながら少しずつ
指定された席へ向かう一哉。
かた、と椅子の音がして
一哉が席に座ったのを
確信してから声をかけた。

「一哉、放課後教室に残って」

「…わかった。」

「…」

放課後

きりーつれいー
さようならー
いつもなら元気に挨拶する
私には号令の声が聞こえない。
頭のなかは
一哉のことでいっぱいで、
なにも頭に入ってこない。

「間宮」

誰かに背中をつんと
つつかれて、
後ろを振り替えった。

「あ…隼くん、どうしたの?」

「いや…その…、…。」

「?」

「部活こいよ?」

「う、うん、行く…よ?」

「はやくこいよ?」

そういって私の頭に手をポンとのせ
隼くんは教室を後にした。
どうしたんだろう…、
とても、不安そうな顔してた。

「…鈴波」

「!!」

一哉に声をかけられ
はっときがつくと、誰も教室に
残っていなかった。
いるのは私と一哉だけ。
私たちは向かい合って見つめあった。
一哉の目はすごくせつなそうで、
悲しそうで…だけど、たぶん
私の目も同じ目をしてる。

「一哉…」

「鈴波…」

重い口を開いた。
あぁまただ。
また、喉が締め付けられる。
声が出づらい。

「な、んで…ここに、きた…の?」

震えた声で私は聞いた。
私の前から消えた彼がなぜ、
ここにいるのかを。

そして、一哉も口を開いた。

「俺は…」

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