星の砂
女の子は毎日毎日男の子に会いに行きました。一緒に街の中を散歩したり、動物と遊んだり。
でも、男の子は不思議でした。何も食べず、お水も飲まないのです。女の子は心配してあげようとしたことがありましたが、男の子は決して受け取ってくれませんでした。
それからは、女の子は男の子の前では食べたり飲んだりすることをやめました。
そしてある日、女の子は男の子にあるおとぎ話をしました。
それは、この砂漠のどこかに『星の砂』という砂の粒があって、それを手に入れると願いが1つ叶う、というおとぎ話です。
女の子は続けて言いました。
お父さんとお母さんとお昼も一緒にいたい。
それが、女の子の願いでした。
男の子は必死に頷きながら聞きました。男の子はまだ言葉がわからないところもあって、おとぎ話をちゃんとわかったかどうかは女の子は不安でした。
でも、男の子がしっかり聞こうと何度も頷いているのを見て、それだけで満足でした。
このおとぎ話はお父さんにもお母さんにも誰にも言ったことがないおとぎ話で、男の子が初めておとぎ話を聞いてくれた人でした。
ソレ……ミツケル。
男の子はしばらく黙っていましたが、いきなり立ち上がって女の子に言いました。
女の子は嬉しかったのですが、首を横に振りました。
どこにあるか、知らないもん。
ミツケル。ゼッタイに、アル。
明日、砂漠に行ってみる?
イク!
じゃあ、約束して。おとぎ話のことは秘密。
ヒミツ?
誰にも言わないって約束して。
イワ、ナイ。ダレにも。
じゃあ、指切りしよう!
女の子は小指を出しました。男の子は首を傾げるばかりでしたが、真似すればいいんだよ、と女の子が教えました。
男の子も真似して小指を出します。
女の子は自分の小指を男の子の小指に絡めて唱えました。
指切りげんまん
嘘ついたら針千本のーます
指切った!
男の子はちんぷんかんぷんなその呪文に驚いていましたが、ずっと、女の子と指切りをした小指をいつまでも眺めていました。