星の砂
女の子はぱちりと目を覚ましました。
水の中にいたはずなのに、身体は砂の上にあって女の子はびっくりしました。
そして、男の子の姿を探しました。オアシスに飛び込んで行く姿を見たからです。
しかし、どこにもいません。もしかしたら溺れているかもしれない、と女の子はオアシスの水に顔を入れて目を開けました。
すると、そこには周りの砂と色の違った砂の山があるだけでした。それはオアシスの中央から伸びていて、ちょうど女の子が倒れていたところを目指していました。
女の子は不思議に思ってじーっと見つめていましたが、見つけてしまったのです。
その色の違った砂の中に、男の子の服が埋もれているのを。
そして、女の子は気づきました。
男の子は、砂だったのだと。だから何も食べず、お水も飲まなかったのだと。
男の子は、何も食べられず、お水も飲めない身体だったのです。もしもそんなことをすれば、たちまち身体の砂が水分を吸って、泥となっていたことでしょう。
女の子は悲しくなりました。男の子はもう、どこにもいないのです。
女の子は必死にその色の違った砂をかき集めました。
泥となってしまった男の子。
女の子のせいでいなくなってしまった男の子。
女の子が大好きだったトモダチ。
オアシスの中から泣きながらトモダチを引き上げます。でも、それは手のひらに乗るだけの泥の塊。そこに女の子の涙が染み込んでいきました。
その涙は泥の塊を溶かし、ついには泥が手のひらからボロボロと崩れ落ちていきました。でも、女の子は驚きました。
手のひらに残ったのは、小さな小さな瓶に入った星の形をした空色の粒だったのです。
『星の砂』
『星の砂』は、なんと男の子が持っていたのです。男の子そのものが、『星の砂』だったのです。
でも、女の子は喜びませんでした。男の子がいなくなってしまっては、お父さんとお母さんがお昼にいても退屈な毎日です。男の子の命は水の中にすべて溶けてしまいました。
女の子は声を上げてしばらく泣いていましたが、いきなり泣き止みました。
そして、『星の砂』に願い事を1つだけお願いしました。その願いは、女の子しか知りません。
その願いは聞き届けられ、それから女の子は楽しい毎日を送りましたとさ。
おしまい。