運命の二人~白と黒の物語~
庭まで来ると、凛々は立ち止まり、懐かしそうに目を細めて辺りをゆっくりと見渡した。


手入れされた庭は色とりどりの花が咲き乱れ、池の魚は長い尾びれを優雅に揺らして泳いでいた。

「…ここは貴方のお母様の為に造られた庭だったわね。」


「ああ。母は特に天上界の血が濃くて魔界には合わなかったから。外に出られない母が楽しめるようにと父が造ったんだ。…話した事があったかな?」


「あ、うん。マーサから聞いたのよ。」


少し慌てた様子の凛々にやはりいつもと違う雰囲気を感じる。


じっと見られている事に気づいて、凛々は目をそらした。


どうしたんだろう。いつも恥ずかしそうに俯く事はあっても、理由なく目をそらす事はなかったのに。

「…貴方のお母様はどんな気持ちでこの庭を見ていらしたのかしら。きっと天上界へ帰りたいって思っていたでしょうね。」


凛々は遠い目をしてまた庭を見た。


「どうだろう。母から天上界の話をされた記憶はないんだが、とても家族思いの人だったよ。
辛そうな顔を一度もしなかった。いつも優しく微笑んでいて。皆それだけで幸せな気持ちになったな。
…どうした?急にそんな話をしてきて。今日は何だかいつもと様子が違う。何か困ったことでも…」


「あのね。私、ここに残る事にしたの。」


「え?」


凛々が唐突に話し始めたので、ジャスティスは凛々の話が一瞬理解出来なかった。


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