運命の二人~白と黒の物語~
「まさか自分の許嫁の事を忘れてしまったのか?冷たいな。」


神経を逆撫でする甘い声色で語りかけてくる。

ドクンッ
心臓が痛い。
今、この人は何を言ったの?

泣きそうだ。

凛々は懸命に自分の心と闘った。

違う、違う!
私は、この人のことなんか知らない!

私の心を掻き回さないで!!

凛々は頭を抱えて激しく首を振った。


落ち着け。落ち着け。
ここはどこだった?


凛々は一生懸命思い出そうとした。

私の家。パパとママがいて、大好きなタロがいて………

タロ!!


凛々はスクッと立ち上がり、青年を見た。

「タロはどこ?ママは?」

青年は凛々の態度が明らかに違うので少し驚いた顔をしたが、すぐ、元の寛いだ顔に戻った。


「タロ?」


「そうよ。私の大切な犬の事よ!」


息はまだ荒いままだったが、さっきのような恐れは消えていた。

真っ直ぐ相手を見つめて質問した。


「私のタロとママはどこ?」


「私の…か。」
青年からは、先程の表情は消えて、不機嫌な顔を見せた。




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