運命の二人~白と黒の物語~
「君の母親は、寝室で眠っている。」
と2階を指差した。

「犬は。」
青年は、右手をスッと横に出し、手のひらを上に向けた。

「ここだ。」
すると、ブンと音がして丸い水晶の玉のような物が出てきた。それはどんどん膨らみ、中に有るものが本来の大きさになった。

「タロ!!」
凛々が声をあげ、近寄ろうとすると、青年は無言で制した。

凛々の脚が止まる。


玉をくるくると回しながら「まだこんなものを追いかけているとはな。」

と嫌悪感をあらわに、玉を眺めている。


「お願い。タロを傷つけないで。」

凛々は涙を浮かべながら懇願した。

「そんなにこれが大切なのか。」


「当たり前じゃない。私にとって何より大切な相手なのよ…。」
凛々が泣きながら、玉に近づこうとすると


「おっと。」
と青年は玉を消してしまった。




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