運命の二人～白と黒の物語～
「バルゴ！落ち着いてちょうだい。リリー様がそんな事をするわけがないでしょう？」


マーサは最大限の威厳でバルゴを制した。


「しかし、殿下に限ってそんな事があるわけがない！」


怒りが鎮められないバルゴはまだ凛々を睨み付けていた。


「いったいどうして？今まで一度もこのようなお姿を見たことはないのだぞ！」


「…ごめんなさい。こうなった責任は私にもあるの。」


「リリー様？！」


マーサがびっくりした顔で振り向いた。


「ほら見ろ、マーサ！やはりこの女が殿下を陥れたのだ！」


怒りのあまり、敬語も忘れたバルゴがまくし立てる。


「お黙り！バルゴ！
リリー様、詳しく事情を話していただけますか？」


冷静さを失わないようにしながらも顔色は青ざめていた。


「詳しくは話せないの。でも信じて！こんな事になるなんて思っていなかったの。
私は、今からジェットを助けに行くわ。

でも、どういう結果になるかは私にも分からない。
だから出来るだけ城の皆や街の人を避難させてほしいの。」


「ハッ！勝手な事を。お前ごときがどうやってこの事態を修められるというんだ。」


マーサが睨み付けたが、バルゴは止まらなかった。


「お前が来てからと言うもの、殿下は振り回され、こんな事に…この上指図など…」


パシッ


マーサが凛々の方を向いて頭を下げた。


「かしこまりました。ご指示通りに致します。
どうか、ジャスティス殿下の事をお助け下さいませ。」


「ありがとう、マーサ。信じてくれて。」


「何をおっしゃいますか。リリー様を疑ったことなど一度もありませんよ。」


マーサがにっこりとして言った。


そしてマーサは頬をおさえながら呆然としているバルゴを引きずるようにして、城へと戻っていった。




< 375 / 453 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop