運命の二人~白と黒の物語~
凛々は闇に足を踏み入れた途端、一歩も動けなくなってしまった。


闇の中は外から見た感じとは違い、静寂とどこまでも続く暗黒の世界だった。


“何もない”事がこんなに恐ろしいものだなんて。


凛々は一歩も前に進みたくない気持ちと闘いながらゆっくりと足を進めた。


一歩進む度に、頭から記憶や感情がむしりとられるような感覚に陥った。

楽しいこと、辛いこと。

どんどん頭がぼうっとしてくる。


この世界には何も必要ないからだ。


でも。


これだけは忘れたくない。


「はあ、はあ、…ジェット…ジェット!…どこにいるのっ!」


足取りは重くなるばかりで、一歩ごとに苦痛が押し寄せる。


…ジェット!


凛々には声を出す力すら残っていなかった。


…でも、行かなくちゃ。

何が自分を動かしているのか分からない。
ただ、ジェットの事だけ考えて、凛々は進んでいった。





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