色のない世界。【上】
私は何とも思わなかった。
親族が捕まろうが、他人が殺されようが。
でもこの人は何だか他の人とは違うものを持っている、そんな気がした。
この人は殺されてはならない、何でかは知らないけどそんなことを思った。
今まで思ったこともないのに…
「…ご自分のことが大切なら、屋敷(ここ)には来ないで下さい。次こそ殺されます」
表情のない無の顔を男性に向け、私は窓を閉めた。
念を押したから、あの人がもう一回ここへくることはないだろう。
人は皆、殺されるのが嫌だから…
さようなら、見ず知らずの方…
私がもう赤の他人と会うことはない。