色のない世界。【上】




更に「喜史」という親父の名前に女が反応した。




「…喜史?まさか貴様が鷹沢喜史か?なるほど…貴様が…ふっ…」




何が可笑しいのか女は笑っている。
親父は相変わらず下を向いたままだ。




親父と九条院家に何かあったのかは明確だ。




カンッ




話題の変えるかのようにじじいがキセルに入った灰を灰皿に落とした。




その音で一気に静まる。




「…して、お前の頼みとは何だ?」




鋭い目でじじいは女を見た。
見つめられた女は鋭い目つきでじじいを見つめ返している。




しばらく互いに見つめ合ってから、女が口を開いた。




「…鷹沢組に美桜様を助けて欲しい」




美桜という名前に一瞬、じじいの眉が動いた気がした。
親父とヤマトは驚いて女を見ている。




「…ほう、美桜とは九条院家の"黒女"のことか?」




じじいの問いに女は何も言わずにコクリと頷いた。




黒女?なんだ、それ。
美桜がじじいの言う"黒女"なのか?



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