色のない世界。【上】
するとじじいの口角が上がった。
「…なるほどな、学校の裏庭によく悠汰が行くと聞いていたが悠汰、お前"黒女"と会っていたのか」
ダンッ
黒女じゃねぇ、美桜だ。
俺がそう言おうとしたら、女が立ち膝になって足で思いきり畳を叩いた。
その表情は怒っている。
「…美桜様は"黒女"などという道具の名前ではない!」
女が静かに怒ってもじじいはニヤリと笑ったままだ。
"黒女"が道具の名前?
ますます分からねぇ。
全く理解出来てない俺に気付いた親父が表の顔つきで女を見た。
「…おい、一番その美桜に会ってた奴が理解出来てねぇ。お前が説明してやれ」
親父が顎で俺を差した。
女の視線が俺に向く。
俺以外みんな美桜の正体を知っているのか?
ヤマトは目が泳いでるから理解してないようだ。
しばらくして女が口を開いた。