色のない世界。【上】
「…九条院家は先祖代々『黒女の導(こくじょのみちびき)』というものがあり、黒髪の女性は一族に繁栄をもたらすとされてきた。
九条院家の黒女は産まれてから死ぬまで「道具」として屋敷の離れに幽閉され、感情も何も知らないまま、護衛人やメイド以外と会うことなく育つ」
そんな話しがあるのか?
ただ黒髪の女ってだけで幽閉されて感情も何も知らずに生きていくなんて話しがあるのか?
どっかのファンタジーのような話にただ驚くことしかできない。
驚く俺を他所に女は話を続ける。
「…黒女の16歳の誕生日が「解禁日」とされ、九条院家の直系の男、自分の兄弟や親族と子作りをさせられる。出産は次の黒女を産むまで産まされる。
いくら黒女が弱っても病気になっても次の黒女を産むまでは死なせてくれない。そして次の黒女を産ませた男が九条院家の次期当主となる」
何だよ、それ。
じゃあ美桜は次の黒女を産むための道具ってことかよ。
『私は外に出ることのない、繁栄のための"道具"ですから』
美桜は初めからそれを知って今まで過ごしてきたのか。
お前は何を思いながら1日を過ごしてきたんだ、美桜。
自分は道具だって言われて何とも思わなかったのか?