色のない世界。【上】
「…悠汰はいいのか?」
今まで黙って聞いていた親父が口を開いた。
「道具として生きてきた彼女を外の世界に連れ出して、お前は守りきれるのか?彼女を連れ出したらお前は九条院家を敵に回すことになるんだぞ?」
親父が珍しく弱気だ。
いや、親父が弱気になったのは初めてかもしれない。
確かに親父の言うことも一理ある。
美桜を外の世界に連れ出したら、きっと俺はタダじゃすまねぇだろう。
九条院家は美桜を"道具"として再び連れ戻そうとするはずだ。
そうなれば当然この組ごと狙ってくるだろう。
じじいや親父、兄貴や梨緒、組員の奴らに負担をかけるだろう。
でも俺は美桜に言ったから。
助けて欲しい時は必ず俺を呼べ、真っ先に駆けつけるから。って。
だから俺は迷わねぇ。