色のない世界。【上】
そうだ…
俺は…
「…美桜を愛してる。だから俺の持てる全ての力を使って守ってやりてぇんだ」
俺は真っ直ぐに親父を見つめる。
親父は驚いた目で俺を見ている。
じじいはニヤニヤ笑ってキセルを口に咥えてる。
女はじっと俺を見ている。
しばらくの沈黙の後、親父がふっと笑った声が聞こえた。
「…そうか、それを聞ければ満足だ。命を懸けて守れよ」
親父は立ち上がって俺の肩に手を置いた。
「…守りきれなかった俺の分まで守ってやれよ」
親父は小声で言って部屋から出て行った。
その顔は悲しそうで苦しそうだった。
声をかけることも出来ず、ただ親父が部屋を出るまで背中を見つめた。