色のない世界。【上】




カンッ




親父が部屋を出て行ったのと同時に、じじいがキセルの灰を灰皿に落とす音が響いた。




全員の視線が一斉にじじいに向く。




「…して美桜の護衛人、美桜の解禁日はいつだ?」




じじいは横目で女を見た。
女は身体をじじいの方に向けた。




「…一週間後の6月27日だ」




もう一週間しかないのか。
そういえば美桜も後一週間ほどで自分は"道具"になると言っていた。




じじいはまたキセルに火を点けて口に咥える。




「…一週間後か。ふっ、九条院家の大事な黒女が連れ去られたら、あいつは苛立つだろうなー」




ニヤニヤと笑うじじい。
じじいも九条院家の誰かと接点があるらしい。




待ってろよ、美桜。




必ず俺がお前を外の世界へ連れ出してやるから。




だからお前は俺の名前を呼んで、助けを呼べ。




お前が呼ばないと、本当のことを言わないと俺は助けられねぇ。




美桜…




【side end】



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