色のない世界。【上】
「…あらあら。随分と辛気臭い顔してるのね、九条院家の護衛人、柊涼音様?」
この声は…
聞き覚えがある。
一度見たこともある奴だ。
「…ふ、常盤 胡梅(ときわ こうめ)か、久しいな」
姿は見せて来ない。
どっかで笑っている声が聞こえる。
常盤 胡梅。
鷹沢組をご贔屓にしている情報屋。
よく九条院家にスパイとして潜入していた。
皆は常盤胡梅が潜入してるのに気付きもしてなかった。
私だけが気付いてた。
でも敢えて重文様には報告しなかった。
「…あなたには随分とたくさん見逃してもらったからね。ふふ、感謝してるのよ?」