色のない世界。【上】
クスクスと笑ってる。
見逃してたのも気付いてたのか。
最強の情報屋も九条院家のガードには中々勝てないらしい。
一、二度私が見逃してやったことがある。
お父さんは仕事に真面目すぎるから。
お母さんもだけど。
「…今回はまた随分と派手に動いたのね。九条院家と因縁関係にある鷹沢組に助けを求めるなんて」
「…たまたまだ。あの坊主が鷹沢組の若頭だとは知らなかった」
そう、たまたま。
たまたま美桜様と出会って、たまたま美桜様を守りたいと思った、それが坊主だっただけだ。
「たまたま…ね?私には必然的な運命としか思えないけれど?」
すぐそこの曲がり角から聞こえる。
そこにいるのか、は分からない。