色のない世界。【上】
常盤胡梅の声で我に返る。
そうだ、私はこの後どうなるのかなんて考えてもなかった。
ただひたすらに美桜様を助けたくて無我夢中だった。
と言っても大体は決まってる。
「…どうせ私が鷹沢組に話したことがすぐにばれ、捕まるか殺されるかのどっちかだろうな」
捕まってもどうせ重文様の守るための"道具"にされるだけだ。
だったら死んだ方がマシだ。
死ぬのは怖くない。
今まで何度も死にかけた試練を乗り越えてきたのだから。
その全ては美桜様の幸せのため。
私が死んでも美桜様が幸せに暮らしているのならそれでいい。
あなたが幸せに暮らすのが私の願い。
あなたには今まで何もなかった分、幸せになってほしいから。
毎日笑って欲しいから。
それだけが私の願い。