色のない世界。【上】
ふふ、常盤胡梅の笑う声が聞こえた。
「…じゃあ、あなたがもし殺されずに捕まったら私が殺してあげるわ…
九条院家の護衛人のあなたをね…」
最後の言葉は聞こえなかった。
誰に殺されようが構わない。
生け捕りにされた私を殺してくれるのなら。
美桜様にだってこの命を捧げよう。
私が死んで、あなたが幸せになるというのなら。
あなたが私をもう必要としないのなら、私は生きる価値がない。
だったらせめて、あなたの手で殺して欲しい。
どっかの汚れた重文様(やつ)に"道具"にされるのなら…
美桜様、どうか幸せになって下さい。
幸せになって私の唯一の願いを叶えてください。
【side end】