色のない世界。【上】
「出た、オタク。てめぇの趣味のせいで、いつも若のお迎えが遅くなんだよ!ちょっとは反省しろ!」
ヤマトはフンと鼻を鳴らして腕を組んだ。
ヤマトの言葉にテツは「んだとー!てめー!」と言ってヤマトの胸倉を掴む。
はぁ…また始まった…。
いつも迎えが遅くなるとこのケンカが始まる。
昔は割り込んで止めてたが、もうめんどいからほっといてる。
さすがに同じ内容で何回もケンカされると、うぜぇ。
バカどもを置いて先を行く。
すると俺の違和感のある歩き方にヤマトが気付く。
「若!ケガしたんですか!?」
「こんなのたいしたことねぇよ」小声で言って、俺はまた歩き出す。
ちょっとのケガで大げさなんだよ、お前らは。
ほんのちょっと指を切っただけで、その原因を作った奴らにケンカ売るほどの大げさぶり。
嫌でもため息が出る。
俺はチラッと小さくなる屋敷を見て、また前を向く。
背後からあいつらが「待ってください!若~!」と言って追いかけてくる。
俺はそれを普通に無視して、廃墟のような屋敷を後にした。
【side end】