色のない世界。【上】
パリンッ
黒のワンピースの中に湊兄様の手が滑り込んできた時、閉めていた窓ガラスが突然割れた。
「…な、なんだよ!」
湊兄様の手が止まり、二人して窓ガラスに注目する。
この音は……銃声…?
窓ガラスに次々と撃たれているのは銃弾。
涼音が一度だけ侵入者に使ったことがあるから、この音は覚えてる。
湊兄様は耳を塞いで音に耐えているけど、私は割れる窓ガラスから目が離せなかった。
割れかけた窓ガラスが入ってきた黒い物体によって、完全に割れる。
どうして………
もうあなたとの思い出は、閉じ込めてしまったのに。
どうしてそれを破って出てきてしまったの?
あなたを忘れて、"道具"として生きると決めたのに。
どうしてあなたは忘れさせようとしてくれないの?
ジャリ…
割れたガラスの破片を足で踏み、金髪についた細かい破片を頭を振って払う。
その長い前髪の奥の瞳が真っ直ぐに私を捕らえた。