色のない世界。【上】
「謀反の疑いをかけられているお前が、なんでここにいんだよ!
屋敷のメイドは何やってんだ!すぐにこいつらを捕まえろ!」
湊兄様が大声をあげて、メイド達を呼ぶ。
でも部屋はシンと静まり返って、誰も来る気配がしない。
その沈黙を破ったのは、涼音の笑い声だった。
「ハハハハハッ!
護るだけの"道具"を利用するが、自分は何もしようとはしない。
九条院家の奴等は自己中心的な奴しかいないんだな。
屋敷のメイド?
そんなの私が一人で片付けた」
貴様を護るのは、後こいつだけだ。
涼音は銃を構え直し、藤馬の頭に再び当てた。
藤馬は「ひぃ!」と護衛人とは思えない声を出し、怯えている。
そんなやりとりを見ていると、ベッドサイドに人の気配を感じた。
その方向を見ると、悠汰様がいて、私の手首を拘束している紐を解いてくれた。
手首の締め付けがなくなり、体の自由が戻ってくる。
かなりきつく縛られていたため、手首に紐の跡ができている。
それを見つめていると、悠汰様に手首を優しく撫でられた。
「…悪りい、もっと早く来ればこんな傷できなかったよな。遅くなった」
私はただ首を横に振ることしかできない。
悠汰様の顔も見れない。
だってどうして………