色のない世界。【上】
【side 涼音】
階段を素早く降りる。
誰も止めることが出来ないほどに。
微かにお嬢様の部屋から物音がした。
お嬢様はめったに物音をたてない。
すぐに分かった。何かがあったと。
胸ポケットに入れていた銃を両手に持って、お嬢様の部屋に勢いよく入る。
ダンッ!
「お嬢様!お部屋から物音がしましたが…!?」
だが、部屋の中は特に変わってはいなかった。
お嬢様は私に目もくれずに辞書を読んでいる。
「…変わったことはないわ。声も物音もだしてない」
お嬢様はパタンと辞書を閉じた。
私は後から武器を持ってきた多数のメイド達を下がらせ、部屋を見て回る。
銃を胸ポケットに仕舞いながら部屋を歩くと、一つだけ変わったとこを発見した。
窓が、閉まっている。