色のない世界。【上】
考え事をしていた、この猶予が悠汰様に隙を与えてしまった。
悠汰様は私の両頬を手で押さえ、無理やり顔を悠汰様の方に向かされた。
私は当然、悠汰様と目が合ってしまう。
「…お前、自分が何言ってんのか分かってんのかよ!
自分で自分を道具として利用して、涼音(こいつ)を助ける?
これでこいつは助かって、自分は『道具だから』って何事もなかったかのように犠牲者ぶるのか?
ふざけんのもいい加減にしろよ」
どうすればいいのか分からない。
悠汰様が今まで見たことのない表情で、私を見ている。
そして何より悠汰様から目が離せない。
逸らさなければと思うのに、悠汰様の鋭い瞳が私を捕らえて離さない。
「…なんでお前は自分の本当の想いを消して、他人なんか助けようとしてんだよ。
他人助けて、お前の気持ちはどうなるんだよ。
お前は心の中に鍵をかけて、二度と開かないようにしようとするんだろ?どうせ」
表情を感情を隠して言ったつもりだったけど、悠汰様には全て見抜かれていた。
「じゃあ、お前の気持ちはどうなる?
ずっと鍵をかけてそのままなのかよ。
言ったよな?
『助けて欲しい時は必ず俺を呼べ』って。
お前はこのまま一生道具として生きるのか!?
道具として生きて、今までの黒女のようにただ苦しみしかない色のない世界を生きるのか!?
お前は外の世界に出て、色んなことを知りたいんじゃねぇのかよ…!?」
……だから言ったのに。
早く悠汰様を追い出してって……
早く追い出さないから、せっかく心に決めたことが揺らいでしまった。
せっかく、この想いに鍵をかけようとしてたのに。
あなたはどうして……
この疑問を言う前に、私の口は素直な答えを言ってしまう。