色のない世界。【上】




紗七が出て行き、また部屋は静まり返る。




もう一度窓の外の星空を見れば、さっきとは違い空は安らかに眠っているようだった。




きっと泣き疲れて寝てしまったのね。
しばらくあの子に会っていないけど、中身は変わってないのだとつい笑ってしまう。




あなたは大丈夫?
ちゃんと外に出れたの?




私のように失敗してない?




あなただけは私のようになって欲しくない。
そう願ってずっとあなたを育ててきた。




失敗した後の悲しみは背負って欲しくないから。




自由な世界を見た途端に訪れた、絶望の世界。
私はあの絶望の世界を忘れない。




その悲しみをずっと背負っていくから、あなたは手に入れた自由の世界を忘れないで。




そしてずっとその世界で生きて行くのよ?




私には出来なかったけれど、あなたならきっと出来るから。




どうか逃げ延びて………




決してこんな絶望の世界に戻ってきては駄目よ、美桜。




【side end】



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