色のない世界。【上】
2.Backyard
『決して賊を助けるなどなさいませんよう』
昨日涼音が言ったこの言葉が頭から離れない。
……助ける…?
私のどういう行為が"助ける"というの?
考えてすぐ私の身体は本棚へと向かっていた。
辞書を手にして"助ける"を調べる。
『助ける』…危難を救う。災害を逃れさせる。救助する。
意味をだいたい理解して、昨日のことを思い出す。
昨日は窓から見知らぬ男性が入ってきて、涼音達に気づかれて男性が殺されないように窓の外へ逃がした。
「…災害を…逃れさせる」
辞書にあった言葉を呟く。
私があの男性を窓の外へ逃がしたということは、男性の命を助けた…ということ?
「…あれが…"助ける"ということ」
初めて体験した"助ける"。
…なんだか…とても…
私は胸に手を当てる。
気づけば私は久しぶりに笑っていた。