色のない世界。【上】
私も女の子を見つめていると、その隣にいた眼鏡の男性が話し出した。
「怖がらせてしまってすまない。
俺は悠汰の父でこの鷹沢組の組長、鷹沢 喜史」
「たかさわ…ぐみ?」
悠汰のお父様ということは分かったけど、鷹沢組と言うのがよく分からない。
外の世界では家に組とつけて呼ぶの?
「えっと、鷹沢組というのはだな…極道一家の一つで…って極道から説明しなきゃだよな」
私の表情を見て悠汰のお父様・喜史様は頭を掻きながら小声で何かを言っている。
きっと私に説明しようとしている。
私が外の世界のことを何も知らない、ということを理解しているようだった。
私は喜史様と会うのは初めてだけど、喜史様は私と会うのが初めてじゃないみたい。
「そんな今まで幽閉されてた嬢ちゃんに極道なんて、分かるわけねぇだろ」
なんて言おうか考えている喜史様に黒髪の男性はふっと笑って、煙草を灰皿に押しつけた。
喜史様を横目で見ると、次は私を見てきた。
「初めまして。
俺は鷹沢 樹。あんたの隣にいる金髪の兄だよ」
男性、改め樹様は私の隣にいる悠汰を指差した。
悠汰のお兄様?
確かによく見ると目元が悠汰に似ている。
つい樹様をジッと見つめてしまう。
それに気付かずに樹様を見つめていると、次第に樹様の頬が赤くなってきた。
「美人にそんな見つめられると…さすがの俺も照れるわ」
「え、あ、ごめんなさい!
あまりにも悠汰に似ているから、つい」
美人という自覚はないけど私のことを言っていると分かり、慌てて視線を外す。
「俺が兄貴と似てるとか…」と悠汰はものすごく不快そうな表情をして、それに樹様が反抗したのは別の話。
すると喜史様の隣にいた女の子が、小声というよりはわざと周りに聞こえるような声で私に話しかけてきた。
「いつ兄と長い時間目を合わせない方がいいよ?性病が移るから。あ、私は悠兄の妹の鷹沢 梨緒!小学六年生だよ!」
「おい、梨緒!お前嬢ちゃんになに吹きかけて…」
「ん?お前?」
「いえ、何でもありません、梨緒お嬢様」
樹様が反論しても、悠汰の妹・梨緒様には頭が上がらないらしく、樹様はすぐに静かになった。